本平成9年度基盤研究(C)(2)-科学研究費補助金交付決定通知を受けると同時に、研究の開始に必須となる各種基本的実験装置を発注したが、その内特に実験開始の遅延を起因したのは筋紡錘求心性インパルス観察・解析(dynamic γ か static γ)に必要な一連のNeurolog計測器類(英国、Digitimer社)の納期(平成9年12月)であり、今年度内の目的とする走行トレーニングラットの筋紡錘求心性インパルスのデータを何ら得ること無しに終わった。しかしかかる状況下においても、広い意味での本研究の開始には着手した。本研究の骨子となるラットの走行トレーニング負荷による運動機能系の適応的変化を補足する一連の実験を予備試験的に行い、本研究の最終目標とする身体トレーニングによる適応的変化を、ヒラメ筋および長指伸筋γ運動ニューロン活動という機能的変化として補足できる可能性を強力に支持する結果を得た。その予備試験的実験は、中等度速度(30m/分)・一定時間(9分/日)の走行トレーニングをラットに一定期間(6週間)負荷し、そのヒラメ筋および長指伸筋の神経筋接合部の伝達機能にいかなる変化が観察され得るか否かを、刺激後増強Post-tetanic potentiation(PTP)について調べ、コントロール群のそれと比較・検討した。その結果、今回用いた条件の走行負荷(いわゆる持久性トレーニング)されたラットのPTPの持続時間が有意に延長(約2倍)することがヒラメ筋のみに認められた。身体トレーニングによって生ずる適応的変化の観察が骨格筋の形態的変化にとどまる多くの従来の研究報告と異なり、これらの結果は神経系を含む機能的適応変化の実証を意味すると同時に、本研究の目的とするトレーニング効果による適応的変化として、γ運動ニューロン等の中枢神経系内においても機能的変化が生じ得ることを強く示唆する意義をもつと考えられる。
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