研究概要 |
低夕ンパク食で動物を長期間飼育すると,骨格筋重量は著明に減少し,低栄養性の萎縮が起こる.一方,適度な運動を動物に行わせると,筋重量は増加し,運動性の筋肥大が起こる.この様に低タンパク食と運動は筋量からすればまったく相反する因子であるが,本研究はこれらを組み合わせると筋への影響は相殺され,低栄養性の筋萎縮は運動によって抑制されることを報告するものである.運動による萎縮抑制効果をひらめ筋(SOL)と長指伸筋(EDL)の線維形態から明らかにするために実験を行った. 実験では離乳直後の雌ラットを用いて,自発運動を行わせる群(E)と行わせない対照群(C)に分け,各群が7週令に違した時,さらに標準タンパク食(SP)群と低タンパク食(LP)群とに分け,3週間飼育した.各群のSOLとEDLを切り出し,重量計測後,左側を総線維数計数に,右側を線維組成と横断面積の計測に用いた.面積は光顕下における画像解析システムにより計測した. 運動によりSOL重量は47%もの増加を示したが,EDLの増加率は9%にとどまった.LPによりSOLは17%,EDLは12%減少した.LPによる筋量の減少は運動により著明に抑制され,EDLは対照群のレベルに,SOLは対照群のレベル以上に回復した.LPによりSOLの総線維数と主動線維である夕イプIの面積は著明に減少したが,運動により総線維数も面積も回復した.EDLの総線維数と主動線維であるタイプIIの面積は運動やLPによる増減はあるが,その程度は小さかった.したがって,ひらめ筋では低栄養による総線維数の減少と線維の萎縮は運動により抑制され,実質的に筋重量が回復することが明らかにされた.一方,長指伸筋は低栄養による萎縮も運動による回復も小さく,また総線維数はあまり変化しないことから,外環境の変化に対する長指伸筋の反応はひらめ筋より小さいと考えられた.
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