代謝性体温調整の中核をなす非ふるえ熱産生の主要発部位である褐色脂肪組織(BAT)機能に果たすグルカゴン(G)の役割と、その作用の機序を検討し以下の結果を得た。 1.Ca摂取ラットでは、ノルアドレナリン(NA)によるBAT温と直腸温の上昇は小さく、尾部皮膚温は、対照群とは逆に上昇した。CaはNAのBAT熱産生及び末梢血管収縮作用を抑制することが示唆された。Gは、BAT温、直腸温、尾部皮膚温の何れも対照群と同程度上昇させた。 2.遺伝的耐暑ラットであるFOKの摂食量は、温暖馴化的、寒冷馴化時共対照ラットと差が無かった。 3.寒冷馴化FOKでは、対照ラットに比べてNAによる酸素消費量の増加度が大きかった。又、Gによる直腸温の上昇度も大きかった。 4.急性寒冷曝露時の血奬Gレベルの上昇度は、温暖馴化時、寒冷馴化時ともFOKで対照ラットより大きかった。 5.FOKのBATでは、Gに対するEC_<50>が小さかった。 6.新生期ラットのBATで、イノシトール・トリフォスフェート(IP_3)は用量に応じて酸素消費量を増加させた。 7.プロラクチン(PRL)投与ラットでは、BATのGによる熱産生反応が低下していた。 8.PCRによる解析の結果、BATでShort formのPRLリセプターmRNAシグナルが検出された。このシグナルは新生期ラットのBATが成体ラットより高かった。 これらの結果は、遺伝的に耐暑性であると同時に耐寒性にも優れているFOKラットの非ふるえ熱産生発現にはGが重要な役割を果たしている事、及びBATでのGの作用IP_3-Ca^<2+>ルートを介して発現され、その作用はPRLによって抑制的に調整されている事を示している。
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