研究概要 |
麻酔、人工呼吸下のラットを用いて後肢の大腿二頭筋血流をレーザードップラー血流計で測定した。骨格筋血流の調節について次の2点について研究を行った。 1.後肢足蹠の電気鍼刺激(0.5-10mA,0.5ms,20Hz,30s)による同側後肢の大腿二頭筋血流の反応を調べた。0.5-1mAの刺激は効果がないが、2mAの刺激で平均動脈血圧が上昇し、それに伴い筋血流も約5%程度軽度に増加した。5mAではさらに血圧上昇反応が大きくなり、筋血流も約10%増加した。10mAの刺激では刺激中血圧上昇に伴う筋血流増加反応が見られたが、刺激終了後、血圧は元に戻るが筋血流はむしろ約5%減少した。腹部内臓を支配する交感神経の内臓神経を切断すると、電気鍼刺激中の血圧上昇反応とそれに伴う筋血流増加反応は消失したが、鍼刺激終了後の筋血流減少反応は残った。さらに後肢の血管を支配する腰部交感神経幹を切断すると、筋血流減少反応も消失した。以上の結果から、電気鍼刺激時に出現する筋血流増加反応は、体性一血圧上昇反応に伴う二次的な血流増加であり、刺激終了後に出現する筋血流減少反応は、後肢血管を支配する交感神経活動の反射性亢進によ反応であることが示された。今後は、低頻度の電気鍼刺激の筋血流に及ぼす効果の検討、頸部、腹部などの異なる刺激部位の効果の検討を行う予定である。 2.皮膚では局所の痛覚刺激は、体性感覚神経の軸索反射により、刺激領域の周辺に血管拡張反応を誘発することが知られている。そこで、筋血管にもこのような軸索反射性の血管拡張反応が出現する可能性を考えて、後肢を支配する体性感覚神経の逆行性電気刺激による筋血流反応を調べた。その結果、10V,10Hz,30sの刺激によりCGRP受容体を介する20-30分間続く血管拡張反応が出現することがわかった。
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