研究概要 |
麻酔、人工呼吸下のラットを用いて後肢の大腿二頭筋血流をレーザードップラー血流計で測定し、後肢の電気鍼刺激の効果について次の2点を明らかにした。 1. 後肢足蹠に電気鍼刺激(10mA,0.5ms,20Hz,30s)を加えると、血圧が上昇しそれに伴い同側後肢の大腿二頭筋血流も増加した。血圧上昇及び筋血流増加反応は、交感神経β受容体遮断薬プロプラノロール3mg/kg静脈内投与によりほとんど変化しなかったが、a受容体遮断薬フェントラミン10mg/kg静脈内投与により消失した。腸骨動脈内カニューレを介して大腿二頭筋に直接β受容体刺激薬イソプロテレノール0.03mgを投与すると、大腿二頭筋血流は増加し、a受容体刺激薬フェニレフリン0.3mgを投与すると筋血流は著しく減少した。以上の結果から、後肢足蹠電気鍼刺激による大腿二頭筋血流の増加反応は血圧上昇に伴う二次的反応であること、大腿二頭筋血管には血管拡張性のβ受容体は存在するものの、この筋血管β受容体は電気鍼刺激による大腿二頭筋血流増加反応にはほとんど関与していないことが明らかとなった。 2. 後肢足蹠及び下腿部に種々の強度の電気鍼刺激を加え、体性求心性神経の興奮閾値と大腿二頭筋血流に及ぼす効果を調べた。後肢足蹠刺激ではAδ及びC求心性線維の興奮する刺激強度で筋血流が増加した。他方、下腿部刺激ではAδ及びC線維の興奮する刺激強度で筋血流が増加する場合と減少する場合があった。下腿部の皮膚と筋を分離して皮膚のみを刺激すると筋血流は増加し、筋のみを刺激すると筋血流が増加したり減少した。従って、下腿部の筋からのAδ及びC求心性線維の興奮が、大腿二頭筋血流を増加させたり減少させると考えられた。
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