研究概要 |
平成9年度と10年度の本科学研究費により体性感覚刺激による骨格筋血流の調節に関する二つの仕組みを麻酔ラットを用いて明らかにした.一つは後根の電気刺激によるCGRP受容体を介する骨格筋血流増加反応であり,他の一つは足蹠の鍼通電刺激によって起こる骨格筋血流増加反応である.後者の例では骨格筋血流の増加と同時に血圧の増加が認められ,内臓神経の切断で血圧増加の反応が消失すると筋血流増加反応も消失した.この事から鍼通電刺激によって起こる筋血流の変化が筋交感神経によるものではなく血圧の変化によることが明らかとなった. 平成11年度は鍼通電刺激によって起こる血圧の反応について検討した.足蹠に加えて臨床的に頻繁に用いられる下腿部(足三里)を刺激した. 麻酔ラットの足蹠と下腿部に種々の強度の鍼通電刺激を行ったところ,足蹠刺激では2mA以上の刺激で血圧増加のみ,足三里の刺激では約半数例で血圧増加と残りの半数例で血圧下降が起こった.鍼刺激による血圧変化が内臓血流の変化によるものと考え,レーザードップラー血流計を用いて腎血流を測定した.足蹠の鍼通電刺激により強度依存性の血圧増加と腎血流の減少,足三里の刺激により強度依存性の血圧下降が起こる際には腎血流増加が認められた. 鍼通電刺激効果はナロキソンで拮抗するという報告に基づきナロキソンの効果を検討した. 足蹠および下腿部の刺激で起こる血圧の変化はナロキソン投与の影響を受けなかった. 以上のことから皮膚組織の多い足蹠と筋組織の多い下腿部の刺激では異なる血圧反応が起こることが明らかとなった.また本研究で明らかにした鍼刺激による血圧の反応は鎮痛機構とは機序でおこっていることが明らかとなった.
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