研究概要 |
刺激伝導系異常の要因の解明のために刺激伝導系自身の加齢による機能上の内因性変化を生化学的な観点から調べるため,平成9年度は刺激伝導系の局所のcGMP濃度の測定を目的としてグアニリルシクラーゼ活性の測定法を確立しつつある. 方法としてラジオアイソトープを用いず,かつ従来法よりも迅速にcGMP量を定量する目的で酵素蛍光法を採用し,50fmo1からの定量を可能にした.すなわち,他のグアニンヌクレオチド類をGTPに導き,弱アニオン交換樹脂を用いたカートリッジカラムでcGMPのみを単離した.得られたcGMPを定法でGTPに導き,succinic thiokinaseとpyruvate kinaseによる増幅反応で大量に生成するピルビン酸を乳酸に変換する反応の補酵素であるNADHの蛍光変化を測定した.測定時間は全行程で約14時間であった.この成果は平成10年7月に開催される第13回国際薬理学会(ミュンヘン)で発表する予定である. 一方,房室結節伝導の生理薬理的特性をイヌ血液潅流房室結節標本を用いて行い,M_2ムスカリン受容体の選択的拮抗薬AF-DF116の房室結節伝導における抗ムスカリン作用を検討し,また超短時間型β_1選択的拮抗薬の作用も検討している. これらの結果を踏まえて,平成10年度は心筋ミトコンドリアプロトンATPase活性の迅速な測定法を確立させ,加齢のモデルとしてFisher344系ラットやうさぎを用い,心臓刺激伝導系における呼吸や受容体機能に関わる様々な物質の加齢による変化を測定する予定である.
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