研究概要 |
刺激伝導系異常の要因の解明のために刺激伝導系自体の加齢による機能上の内因性変化を生化学的な観点から調べることは非常に重要である.そのためには刺激伝導系細胞の機能を抑制系と促進系の両面から評価する必要がある.そこで.我々は重要な細胞内二次メッセンジャーであるcGMPやcAMPの細胞内濃度を同時に簡便に測定できる手段の開発を検討した. 平成10年度中に我々はラジオアイソトープを用いない高感度CGMP定量法の開発に成功している(第13回国際薬理学会(ミュンヘン),平成10年7月発表,Anal.Biochem.投稿中).我々はCGMP定量の手法がcAMP定量に適用できることに気づき,現在,cGMP,cAMP同時測定法の確立をめざしている. また,抗マラリヤ作用を持つ天然物,pteleprenineの構造が抗不整脈薬であるキニジンによく似ていたことから心臓刺激伝導系への作用を期待して調べた.しかし,心臓への薬理活性はなく,他の臓器に作用することが判明した(J.Pharm.Pharmacol.).一方,房室結節伝導の生理薬理的特性をイヌ血液環流乳頭筋標本を用いて行い,M2ムスカリン受容体の選択的拮抗薬AF-DF116の房室結節伝導における抗ムスカリン作用を検討した結果,アセチルコリンの副交感神経刺激によるイヌ房室結節伝導はほとんどすべてM2受容体を介していると結論された(J.Cardiovas.Pharmacol.,1999.in press). これらの結果を踏まえて,平成11年度は加齢のモデルとしてうさぎを用い,心臓刺激伝導系における受容体機能および細胞内情報伝達系機能の加齢による変化を細胞内cGMP,cAMP,およびカルシウムイオン濃度測定により比較する予定である.
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