研究概要 |
我々は本研究計画において容量性Ca_<2+>流入(Capacitative Ca^<2+>-Entry:CCE)チャネル活性化機構のみならず,膜電位や細胞内Ca^<2+>貯蔵部位との連関を明らかにするためにFura-2による内皮細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)測定と,パッチクランプによる細胞膜イオン電流の同時測定・記録を行った.培養ヒト大動脈内皮細胞では非刺激時の静止膜電位は-8〜-90mVと個々の細胞により大きく異なっていたが,[Ca^<2+>]_iは50-100nMと低く保たれていた.ヒスタミンや流れ刺激により[Ca^<2+>]_iの上昇が引き起こされ、膜電位は全ての細胞で-30mV付近に収束した.この値はグラミシジン穿孔パッチ法により測定した生理的なCl^-の平衡電位(約-28mV)にほぼ一致した.以上の結果から,ヒスタミン刺激による容量性Ca^<2+>流入のみならず,流れ刺激によるCa^<2+>流入(Strech- and/or Shear Stress-induced Ca^<2+>Entry)でも,Cl^-電流の活性化がCa^<2+>流入に機能的に連関しその駆動力を与えていることが明らかとなった. さてglibenclamide(10-100μM)はヒスタミンやATPそしてcyclopiazonic acidによる容量性Ca^<2+>流入とCl^-電流を濃度依存的に抑制したが,Cl^-電流抑制作用が約10倍強力であった.この事実はCl^-チャネルの活性化が直接容量性Ca^<2+>流入チャネルの開口を引き起こしているのではないことを示唆している.現在このCl^-チャネルの電気薬理学的特性を明らかにしつつあると同時に,容量性Ca^<2+>流入チャネルの本体と考えられているtrpを培養細胞に発現させ,その制御機構を解析しつつある.
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