研究概要 |
(1)加齢にともなう血管収縮弛緩機能の変化を細胞レベルで明らかにするためにラット大動脈平滑筋を単離・継代培養し,受容体刺激による細胞内カルシウム濃度の変化を検討した.ラット大動脈平滑筋は2カ月例の若齢ラットおよび27カ月齢の老化ラットからそれぞれ単離し,加齢による性質の相違について比較検討した.老化ラットにおけるアンジオテンシンIIによる収縮は若齢ラットに比較して著明に減弱していたのに対応して,細胞内カルシウムの増加反応も老化ラットで減少していた.このことが老化に伴う収縮作用減弱の原因の一つと考えられた. (2)ラット大動脈平滑筋におけるアンジオテンシンII受容体のmRNAをRT-PCR法を用いて測定した.GAPDH mRNAに対するアンジオテンシンII受容体のmRNAをデンシトメーターで測定し加齢にともなう変化を調べたところ,受容体mRNAには有意の差が認められなかった.従って,受容体レベルでの変化は老化による変化に関与していないと考えられた. (3)ラットアンジオテンシンII受容体(AT1)のmRNAの発現調節機序について,サブタイプであるAT1aおよびAT1bについて検討した.血管平滑筋細胞ではAT1bがほとんど発現していなかったが,副腎においてはこれら2種類のサブタイプが存在するためにモデルとして有用であった.アンジオテンシンIIを一週間持続注入することによりAT1aおよびAT1b受容体mRNAはともに50-70%まで減少した.この減少の機序を遺伝子レベルで解析するためにAT1受容体プロモーターについて検討したところ,PKCによる抑制性制御部位が認められたがアンジオテンシン自体に反応する領域は存在しなかった.アンジオテンシンはmRNAの安定性を変化させることで受容体mRNAの調節をおこなっている可能性がある。
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