研究概要 |
ウシ副腎髄質クロマフィン細胞(発生学的に神経堤に由来する)の培養系において、細胞表面^3H-サキシトキシン結合実験、細胞内への^<22>Na流入のアロステリック調節、ウエスタン・ブロット、ノーザン・ブロット、nuclear run-on assay、細胞内[Ca]i測定により、細胞膜Naチャネル量とその機能、Naチャネルα-およびβ_1-サブユニットmRNAレベルを変動させる機序を解析した。 1. C-カイネース(PKC)による調節:チメレアトキシン(conventional PKCの活性薬)、Go6976(conventional PKCの阻害薬)、フォルボールエステル、ブレフェルジンA(ADP ribosylation factor-1阻害薬)などを用いた。(1)PKC-αの細胞質から膜分画への移行は、Naチャネルの細胞膜表面からのendocytosisを促進した。(2)PKC-εの膜分画への移行は、Naチャネルα-サブユニットmRNAレベルを低下させ、その後,β_1-サブユニットmRNAレベルを上昇させた。(3)α-サブユニットmRNAレベルの低下は、その遺伝子転写率の低下によるものではなく、mRNA崩壊率の亢進に由来した。(4)PKC-εの効果は、蛋白合成に依存していた。 2. A-カイネースによる調節:蛋白合成を介して細胞膜Naチャネル量を増加させたが、Naチャネルα-およびβ_1サブユニットmRNAレベルには影響を与えなかった。新たに発現したNaチャネルも、native Naチャネルと同一のアロステリック開孔機構を示した。 3. 細胞内[Ca]_iによる調節:小胞体Ca-ATPase阻害薬タプシガルギンによる[Ca]_iの持続的上昇は、細胞膜-Naチャネル量、α-およびβ_1-サブユニットmRNAレベルを低下させた。2,5-di-(t-butyl)-1,4-benzohydroquin one(DBHQ)による一過性[Ca]_1上昇は、効果がなかった。 4. 神経保護薬による調節:リルゾール、NS-7[4-(4-fluorophenyl)-2-methyl-6-(5-piperidinopentyloxy)pyrimidine hydrochloride]は、Naチャネルα-サブユニットのドメインIトランスメンブレン・セグメント6に結合し,Naチャネル開孔を阻害し、その結果、Caチャネル開孔、カテコールアミン分泌を低下させた。Naチャネル量を変動させるか検討中である。
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