研究概要 |
Na-Ca交換電流に対する阻害薬、KB-R7943(KB)と DCB(dichlorobenzamil)の薬理作用について。 私はこれまでの研究で、KBとDCBがモルモット心室筋組胞のNa-Ca交換電流を方向依存性に抑制することを見出した。即ちKBは、外向きNa-Ca交換電流を内向き電流より良く抑え、逆にDCBは、内向き交換電流を外向き電流より良く抑えた。更にKB-R7943は細胞外Caと競合拮抗することを明らかにした。しかしこの結果は、交換電流を一方向のみ流れる条件で記録した時である。そこで今度は、交換電流が両方向流れる様にし、2つの薬がどう効くかを調べた。Na-Ca交換電流が-60mVで逆転するように細胞内外のNaとCa濃度を設定し、10mVから-120mVまでのランプ波をかけ、10mVと-120mVでそれぞれ外向き、内向き交換電流の大きさを、薬の在る時と無い時で測った。すると、薬による抑制は両方向で同じ度合いを示した。この結果は、薬には方向依存性があるが、交換輸送体からの解離が遅い為両方向を同程度抑制するのかも知れない。そこで、同じイオン条件で、両方向用ランプ波形の半分ずつ(-60mVから+60mVまで脱分極して-60mVに戻る、又は、-60mVから-120mVに過分極し-60mVに戻る)をかけ片方向の電流を記録しながら薬の作用を調べた。すると、この条件でも両方向と同じ割合の抑制効果が見られた。つまり、薬の抑制は輸送体の働く方向には関係がない。最初の実験で、一方向の交換電流に対する作用を見る時、外向き電流では細胞外Ca濃度を0から1mMへ、内向き電流では細胞外Naを0から140mMに上昇させた。薬はCa又はNaが0mMの時から作用させた。それに対し両方向モードでは、薬は1mMCa,140mM Na存在下で投与している。これらのことから、薬は競合的にCaまたはNaの結合部位に作用するため、上記のような方向性が表れたと考えられる。
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