平滑筋収縮シグナリングを制御しているミオシン軽鎖リン酸化レベルは、細胞内Ca^<2+>濃度上昇により活性化されるミオシン軽鎖キナーゼと、低分子量G蛋白質Rho〜Rhoキナーゼを介するミオシン軽鎖フォスファターゼの両酵素によって調節されると考えられている。 本研究では、モルモット各種平滑筋標本を用いて、低分子量G蛋白質Rhoのactivator、LPAの、張力並びにミオシン軽鎖リン酸化に及ぼす作用を調べた。また、各種収縮薬による平滑筋収縮機構におけるRhoの関与を調べる目的で、ileumにおける収縮作用に対するRhoキナーゼの阻害薬Y-27632及び他のキナーゼ阻害薬の効果を検討した。さらに収縮時のRhoの細胞内局在を測定した。 1. LPAはileumやtaenia coli平滑筋標本のみで弱い、持続的な収縮作用を惹起したが、ミオシン軽鎖リン酸化の有意な変化は認められなかった。 2. ileumにおけるLPAの収縮作用は、Rhoキナーゼ阻害薬Y-27632、チロシンキナーゼ阻害薬genistein及びミオシン軽鎖キナーゼ阻害薬ML-9前処置により抑制されたが、プロテインキナーゼC阻害薬chelerythrineによっては影響を受けなかった。 3. AChによる収縮作用も、Y-27632、genistein及びML-9により抑制されたが、Y-27632による抑制は一時的であった。 4. LPAやACh投与後、細胞質画分のRhoは減少した。 以上の結果、LPAによる収縮作用は著しく弱く、Rhoキナーゼの特異的阻害薬はAChによる収縮作用を一部しか抑制しなかったことから、モルモット回腸平滑筋収縮時には、Rhoの細胞内局在は変化するが、Rho〜Rhoキナーゼ系の果たす生理的役割は小さいことが示唆された。
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