平滑筋の収縮制御機構として最も有力なミオシンリン酸化説も、in vitro では確立しているが、そのリン酸化が生筋の張力発生とどう関連するか未だ不明で、両者の量的解析が急がれている。本研究は、この不確かな点、リン酸化の程度と張力の関係について、2年間で、哺乳類の単一平滑筋での張力測定を含めた実験法を確立し、ミオシン制御軽鎖交換によってそれぞれ詳しく調べ、カルポニンの弛緩における生理的意義を検討することを目的としている。本年度は、従来、両生類の胃の平滑筋で行われていた方法を哺乳類の平滑筋(主に血管平滑筋)に応用し、その収縮張力測定法を確立することである。本年度4月に異動したこともあり、実験室の整備に時間を要して当初予定したほどには進まなかったが、次のような成果があった。 1.単一平滑筋細胞の分離、測定系への固定保持: モルモットの大動脈、腸間膜動脈から酵素処理(コラーゲン、エラスターゼ)により単一細胞を作製。当初は酵素処理により、円形の細胞しか得られなかったが、酵素量、処理時間の調整により、次第に紡錘形をした平滑筋本来の形状の細胞が得られるようになった。張力測定のためには単一細胞の両端をマイクロマニピュレーターの操作で張力測定系に固定することが必要で、この点が最も困難を極めている。哺乳類の平滑筋は、両生類ガマ胃平滑筋よりも長径が短いため、測定系のプローブに巻きつけるという従来のやり方では難しい。そこで短い分、工夫をして、まだ十分ではないがかなりの部分までの保持が可能になった。 2.skinned cellの作製: 分離した単一細胞の懸濁液をsaponin処理して膜透過性を高めたskinned cellを作製。収縮性を保持したskinned cellを作ることができた。 来年度は、本年度の成果を踏まえ、さらにカルポニンの収縮に及ぼす影響の検討に発展させたいと考えている。
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