研究概要 |
(1)コンピユ-タを用い眼球運動を解析することにより、抗不安薬ニトラゼパムの薬物動態と中枢神経に及ぼす薬理作用の評価を試みた。健常成人8名(男性4名、女性4名)を対象として、double-blind randomized placebo controlled crossover法で実施した。薬力学的パラメータ(最大眼球移動速度,追跡眼球運動,VAS)は14回測定した。ニトラゼパムの薬物動態学的パラメータに関しては、日本人のCmaxは既に報告されている白人の約2倍の値を示した。最大眼球移動速度はニトラゼパム群で有意に減少した。追跡眼球運動では有意な差は認めなかった。最大眼球移動速度に対する血中濃度-効果相関は直線と時計回りの2つのタイプが存在した。コンピュータを用いた眼球運動解析は、通常のperformance testのように練習を必要とせず、光源を眼で追いかけるだけのため、簡便で感受性が高く再現性に富むもので、中枢に作用する薬物のヒトにおける評価法として応用価値が高いものと思われた。 (2)ニトラゼパムを用い、体内動態・中枢抑制作用における性差を眼球運動解析を用いることにより検討した。日本人健常成人男性8名、女性8名の計16名を対象とした。試験は、double blind randomized placebo controlled crossover法にて行った。眼球運動の測定は計16回行った。尚、VASはNorris^<3)>の16種類の評価項目の中からmental sedation、physical sedation、tranquillizationのカテゴリーの中から、各々2項目ずつ計6項目を選択し解析を行った。男性群と女性群における血中濃度-時間曲線間には分散分析で有意差はなかった。追跡眼球運動はプラセボ服用時の比較で、女性が男性より明らかに低下していた。男性群、女性群ともにニトラゼパム服用群で有意に最大眼球移動速度が低下した。VASに関しては女性群の方が男性群より薬理作用が強く現れる傾向が示唆された。
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