研究概要 |
本研究の継続した目的は、マウス心筋の特殊性とその発達に伴う機能的変化を各種の観点(電気的特性、収縮機構、薬物感受性、等)から検討することであるが、本年度の研究の進展の主たるものは下記の2項目である。 1) これまで、マウス心筋において交感神経α-受容体刺激により成熟心室筋で陰性変力作用が出現するという他の動物種とは異なる反応が出現するが、新生児期にはその効果が陽性であり、生後発達に伴って陽性から陰性という質的変化が起こることを見いだしてきた。更には、成熟心室筋での陰性反応の機序がNa^+,Ca^<2+>-交換電流の促進にあることも見いだした。本年度の新知見は、これと同様の発達に伴う変化が、エンドセリンIどアンジオテンシンIIの作用に関しても認められることを見いだしたことである。即ち、新生児期にはこれらのペプチドが陽性変力作用を示すが、成熟心室筋では陰性変力作用を現す。両反応共に、受容体の種類そのものには変化がなく、それぞれET_AとAT_1である。 2) 本年度の第2の新知見はアセチルコリンの作用に関するものである。この副交感神経伝達物質はマウス心房筋に対して、他の動物種とは異なり陽性変力作用を及ぼすことを見いだした。そこで、その機序に関して様々な検討を加えた結果、アセチルコリンは心房内膜の内皮細胞に作用してプロスタグランジン(PG)を遊離させ、そのPGが陽性変力作用を及ぼすことを示唆する知見が得られた。即ち、陽性変力作用は(1)シクロオキシゲナーゼ阻害薬で消失し、(2)Triton X-100により内皮細胞を除去しても消失する。
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