本年度は、遺伝的てんかん欠神発作発現モデル動物における脳波の解析および核内転写調節因子の挙動を検討した。遺伝的欠神発作モデルであるstargazerおよびlethargicマウスは、発作時に脳波上に棘徐波複合を伴うので、これを指標としてGABA_B受容体拮抗薬および欠神発作治療薬のエトスクシミドの効果を検討し、転写調節因子の動態に及ぼす上記薬物の影響と比較した。両欠神発作モデルマウスの脳波を測定したところ、脳波上に6Hzの棘徐波複合(SWD)が30秒から数分間隔で出現した。GABA_B拮抗薬のCGP 35348(200mg/kg)はlethargicマウスのSWDを有意に抑制したが、stargazerマウスのSWD発現に対しては影響を及ぼさなかった。しかしながら、より高用量(400mg/kg)ではstargazerマウスのSWDも有意に抑制された。また、エトスクシミド(200mg/kg)も、両モデルマウスのSWD出現を有意に抑制した。さらに、ゲルシフト法でstargazerおよびlethargicマウスの全脳におけるcyclic AMP responsive element(CRE)およびactivator protein 1(AP-1)DNA結合活性をでそれぞれの系統のwild typeマウスと比較したところ、両欠神発作モデルマウスの全脳における両結合活性はwild typeマウスに比べて有意に高かった。また、stargazerマウスにおけるこの結合活性の上昇は、エトスクシミド(200mg/kg)により抑制された。以上の結果より、欠神発作モデルマウスにおけるCREおよびAP-1DNA結合活性の上昇が、欠神発作発現と密接に関連していることが明らかとなった。現在は、遺伝的欠神発作発現モデルの両DNA結合活性に及ぼすGABA_B拮抗薬の影響と視床におけるCa^<2+>動態を検討中である。
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