研究概要 |
本年度は、発症機構が異なると考えらる2系統の遺伝的欠神発作モデルマウスlethargic(lh/lh)およびstargazer(stg/stg)マウスを用い、まず、cyclic AMP responsive element(CRE)およびactivator protein 1(AP-1)DNA結合活性を検討した。Lethargicマウスの両DNA結合活性は、同週齢の発作を生じないコントロール(+/+)マウスに比べ、大脳皮質および視床において有意に高かったが、海馬および小脳では、コントロールマウスとの間に差がなかった。また、両部位におけるこれらDNA結合活性の上昇は、GABA_B拮抗薬のCGP46381(60mg/kg,i.p.)の投与により抑制された。CGP46381の抑制効果は、単回投与よりも連続投与で強かった。Stargazerマウスにおいてもlethargicマウスの場合と同様に大脳皮質および視床におけるCREおよびAP-1 DNA結合活性はコントロールマウスよりも高く、これらDNA結合活性の上昇はCGP46381により抑制された。以上より、大脳皮質と視床におけるCREおよびAP-1 DNA結合活性の上昇が欠神発作に依存したもので、視床-大脳皮質系ニューロンの異常に起因していること、および発作発現にGABA_B受容体が関与することがより明らかとなった。Lethargicマウスの大脳皮質および視床におけるCRE結合活性は、CRE-binding protein(CREB)抗体およびリン酸化CREB(pCREB)抗体によりスーパーシフトし、AP-1 DNA結合活性は、c-Fosおよびc-Jun抗体により抑制された。したがって、CRE結合活性の上昇がCREBによるもので、少なくともその一部はリン酸化されていること、および、AP-1 DNA結合活性にはFos-Jun複合体が関与していることも明らかとなった。本年度は、欠神発作発現時の視床における細胞内Ca^<2+>濃度の変化をin vivo条件下で調べることを計画しており検討を開始したが、測定系に問題が多く詳細な検討ができなかった。現在、測定系の確立を急いでいるところである。
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