1.ヒト骨格筋におけるグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)の発現をNorthern blot、RT-PCRおよび免疫組織化学を用いて検討した。 スクリーニングで得られたGDNF cDNAは成熟型ペプチド翻訳部分の上流を一部欠損する短い型であった。Northem blot解析で、げっ歯類と異なり、ヒト成人骨格筋および心筋においては多量のGDNFmRNAが発現していた。免疫組織化学では、正常骨格筋において、全てのファイバータイプの筋細胞にGDNF免疫反応性がみられた。免疫反応性は細胞膜直下、細胞膜および内鞘に集積して観察された。一部の筋細胞においてGDNFの著明な集積がみられ、α-bungarotoxinとの二重染色によって、この部位が神経筋接合部であることが確認された。また筋内有髄神経軸索および筋紡錘においてもGDNF免疫反応性が見られた。RT-PCR解析では、正常骨格筋では短いGDNFが増幅されたが、脊髄前角細胞では増幅されなかった。以上より、筋由来のGDNFが運動ニューロン終末から取り込まれ、軸索内を輸送されることが示唆された。このことからGDNFが運動ニューロンに対して標的依存性の生存活性を示す分子として作用しているのではないかと考えられた。 2.ニワトリ胚肢芽よりGDNFをクローニングした。成熟型ペプチド翻訳部分のアミノ酸配列は、ヒトあるいはげっ歯類と約90%の相同性を持っていた。RT-PCR解析によって、4日目胚肢芽に発現し、6日目で発現が減少した。現在この遺伝子を組み込んだベクターを細胞株に導入し発現させ、遺伝子産物が実際に培養上清中に分泌されるか、運動ニューロンに対して生理活性を持つかを検討中である。
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