研究概要 |
平成9年度の研究において以下のような成果が得られた。 1.自然発症糖尿病動物において、胸部大動脈に対するノルエピネフリンの反応性は著明に増強しており、この原因が内皮細胞の機能低下にあることが明らかとなった。 2.糖尿病マウスおよび高脂血症マウスにコレスチラミンを慢性投与すると、LDLコレステロールが低下し、また内皮細胞依存性弛緩反応の減弱が改善されることが明らかとなった。従って、糖尿病マウスおよび高脂血症マウスにおける内皮細胞の機能低下にLDLコレステロールが重要な役割を果たしていることを明らかにした。 3.糖尿病ラット血管内皮細胞において、Cu,Zn-SODおよびMn-SODのmRNAを測定したところ、いずれも著明に低下していることを明らかにした。このことは糖尿病時にはスーパーオキシドアニオンが分解されにくくなっていること、また一酸化窒素(NO)が分解されやすく、かつLDLが酸化されやすいことを意味しており、重要な知見である。 4.心臓のα受容体およびβ受容体を介した電気生理学的研究を行ったところ、β受容体を介した反応は減弱されており、α受容体を介した反応は増強されていることが明らかとなった。結合実験の成績において、β受容体の数が著明に減少していたことからβ受容体の脱感作が生じる代償性の機序としてα受容体を介する反応が亢進しているものと推測できる。 5.腎臓に走行している血管を灌流し、この部位の内皮細胞の機能を検討したところ、著明な減弱が生じることが明らかとなり、またprostaglandin l_2の生成が促進されていることを始めて明らかにした。 6.本研究を遂行中、α作動薬は胸部大動脈と異なり腸間膜動脈床では極めて脱感作されやすいことを見い出した。
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