1. シナプトゾームへの[^3H]Glu取り込みおよび[^3H]GABA取り込みに対するグルタチオンの効果を解析した結果、両グルタチオンは少なくとも1mM以下の濃度では両取り込みに対して著変を与えなかった。したがって、グルタチオンは神経終末あるいはグリア細胞へのGlu取り込みおよびGABA取り込みに対して調節機能を持たないことが判明した。 2. 興奮性アミノ酸による転写囚子activator protein-1(AP-1)のDNA結合能増強に対する脳内GSH濃度減少による影響ついて解析した。GSH捕捉薬である2-cyclohexen-1-one(CHX)投与により作成したGSH低下マウスに、種々用量のカイニン酸(KA)を投与して2時間後の海馬内AP-1結合能を測定したところ、未処置動物ではAP-1結合能の増強が見られなかった5mg/kgおよび10mg/kgのKA投与でも著明なAP-1結合能の増強が観察された。一方、NMDA投与では、いずれの投与量においても未処置動物とCHX処置動物間のAP-1結合に著変は認められなかった。以上の結果より、脳内GSHの減少はKA誘発性AP-1結合増強をさらに促進されることが明らかとなり、脳内GSHがKAシグナル伝達に関与する可能性が示唆される。 3. 脳シナプス膜へのGSH結合部位の存在は既に報告している。その結合蛋白の本体を明らかにする目的で、GSH固定化アフィニティークロマトグラフィによりブタ脳シナプス膜から本結合蛋白の単離精製を試みた。その結果、分子量の異なる数種の蛋白質が見出された。今後、これらの蛋白質をさらに単離精製した後にアミノ酸配列を決定して同定を行う予定である。
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