単離したウサギ門脈平滑筋細胞のATP-感受性K電流活性に対する細胞骨格蛋白による影響を検討するため、アクチンフィラメント脱重合作用を持つcytochalasin Dと安定化作用を持つphalloidinの効果をwhole-cell patch-clamp法およびsingle channel current recording法を用いて調べた。電極内液にcytochalasin D(20uM)を添加し、10分後10uM pinacidilを投与し最大振幅を比較したところcytochalasin D非投与群(control)の個体の平均は95+/-74pA(n=22)であり、投与群では97+/-59pA(n=22)であった。しかし、同一個体から得られたcytochalasin D非投与細胞で惹起された電流の平均最大振幅を100%として投与群で惹起された電流を相対値で表すと60+/-40%(n=22)となった。細胞外にcytochalasin D(20uM)を投与すると50%の細胞(n=6)でpinacidilによって惹起される電流の減少が認められ、残りの細胞では変化が認められなかった。一方、細胞外にphalloidin(20uM)を投与すると12例中4例の細胞(33%)で電流増強が認められ、6例では変化がなく、2例の細胞では電流減少が見られた。cell-attached patch条件で記録されたPinacidil(100μM)によって惹起されるsingle channel電流はphalloidin(10μM)によってはその活性化に影響を受けず、inside-out patchとした時に生じるrun downに対してもphalloidinは効果がなかった。Kチャネル開口薬とGDP存在下で活性化されたsingle channel電流に対してphalloidinは電流活性化作用を持たなかった。同様にcytochalasin B(10μM)およびcytochalasin D(10μM)はsingle-channel電流の振幅や平均開口時間に影響を与えなかった。また、これらの薬物によって単一チャネル電流が有意に増強したり抑制されることはなかった。以上の結果から、ウサギ門脈平滑筋細胞においてKチャネル開口薬で惹起されるATP感受性Kチャネルは細胞骨格タンパクによって活性を調節される可能性は否定できないが、心筋で観察されたような著明な制御機構としては機能していないと結論した。
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