ヘムオキシゲナーゼは、ヘムをビリベルジン・鉄・COに分解する酵素である。我々は誘導型アイソザイムであるヘムオキシゲナーゼ-1の発現が、種々培養細胞において、ニトロプルシドナトリウムなどのNOドナーによって著明に誘導されることを見い出した。ヒトヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子の5′-flanking regionの-4.0kbの近くの領域には、 cadmium responsive element(CdRE)とAP1が隣接して存在しているが、ニトロプルシドナトリウムによる誘導には、この2領域がともに必要である。また-200bの付近にはpoly d(GT)領域が存在し、この領域は遺伝子多型を示すことを明らかにした。ヒトグリオブラストーマの培養細胞であるT98Gにおいて、インターフェロンγがヘムオキシゲナーゼ-1の発現を著明に抑制することを見い出した。この現象は、特に脳におけるヘムオキシゲナーゼ-1の過剰発現抑制機構のひとつ、つまりビリベルジン、鉄やCOが過剰に産生されないための制御機構ではないかと考えられた。 アドレノメデュリンは、褐色細胞腫から発見された52個のアミノ酸からなる血管拡張性ペプチドである。アドレノメデュリンが脳に存在し、神経伝達物質・修飾因子として作用している可能性を示唆した。また、ヒトグリオブラストーマ、脳脈絡叢由来の悪性腫瘍や大腸癌からも産生されることを証明した。ヘムオキシゲナーゼ-1は低酸素下で発現が誘導されることが知られているが、アドレノメデュリンも低酸素下で発現が誘導されることを発見した。この現象はアドレノメデュリンが、血管拡張作用・気管支拡張作用を有することから、低酸素に対する防御機構のひとつと考えられた。今後、アドレノメデュリンの低酸素下での発現の誘導機構について、ヘムオキシゲナーゼ-1のそれとの共通点と相違点の解明に興味が持たれる。
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