研究概要 |
肝臓の分化に伴って、数多くの遺伝子が特異的に発現される。これまでに、hepatocyte nuclear factor(HNF)-1,-3,-4,C/EBPなどが知られており、それぞれ異なったタイプのDNA結合蛋白負である。これらの転写因子は、肝細胞の分化過程において順次階層的に発現し、最終的に成熟した肝臓組織を形成すると思われるが、その詳しい発現制御機構はいまだ分かっていない。そこで、本研究は、LECラットより分離したoval cellを用いて、HNF-1遺伝子をはじめとする肝細胞転写制御因子が肝臓の分化誘導にどのように関与しているかを明らかにしようとした。 LECラットから分離した肝臓幹様細胞oval cellをin vivoで肝臓に移植すると、移植された細胞は形態学的に肝細胞に分化し、アルブミンを産生できることを明らかにした。本研究で、oval cellを三次元ゲル内でEGF10ng/ml存在下9日間培養したところ、管様構造を形成した。HGF10mg/mlでも同様な構造が観察できたが、EGFと比べてその効果は弱かった。一方、oval cellを一次元ゲル上で、レチノイン酸(1μl/ml)・EGF(10ng/ml)存在下で培養したところ、肝特異的転写因子HNF-4と胆管上皮細胞マーカーγGTPのそれぞれのmRNAの発現が増大した。一方、アルブミンmRNA発現量には影響しなかった。 oval cellを三次元細胞培養系で、形態学的に管様構造を形成した結果から、本細胞がin vitro系で胆管上皮細胞へ分化することができることを示している。このことは、我々が樹立したoval cellは、肝細胞にも胆管上皮細胞にも分化するように運命づげられた肝細胞の最終分化の前に状態にあることを示唆している。
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