研究概要 |
1, ピルビン酸キナーゼ(PK)L遺伝子の転写制御領域のL-III(炭水化物応答性領域)に結合するラットの転写因子のcDNAクローニングを酵母のワンハイブリドシステムを用いて行い,2クローンを単離した。両クローンは3非翻訳の長さを除いて同じ配列を有しており,翻訳配列はマウスやヒトでクローニングされているホメオボックスタンパク質と極めて類似していた。したがって,両クローンはラットHexと考えられた。HexはL-IIIに直接に作用する転写因子ではなかったが,PKL遺伝子のL-IやL-IIに作用するHNF1やHNF4の活性を上げることが認められた。しかしその意義や機構は不明である。Hexは肝臓で強く発現しているので,その発現を種々の条件下で測定したところ肝細胞の分化や分化状態の維持に関与している可能性が示唆された。また,Hexは転写抑制因子であることを明らかにし,その抑制ドメインを同定するとともに,ホメオドメインはDNA結合に関与することを示した。 2, PKM遺伝子の転写制御領域(ボックスA,B,C)の全プロモーター活性に対する貢献度を検討するために,PKM遺伝子の-287までを含むレポーター遺伝子の各々の領域に単独あるいは種々の組み合わせでミューテーションを導入し,その活性を検討した。ボックスA,ボックスB,ボックスCを単独でミューテーションさせた場合には,それぞれ19%,42%,48%の活性低下が認められた。また,これらのボックスを組み合わせてミューテーションさせた場合にはボックスBまたはボックスCがミューテーションされていれば約60%の活性低下が認められた。したがって,ボックスBとCが重要な役割を演じていることが明らかになった。次に,これらのボックスに結合する転写因子の同定をゲルシフト法で行った。その結果,ボックスAとBにはSp1ファミリーのSp1やSp3が,ボックスCにはNF-Yが結合することが明らかになった。
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