神経伝達物質の放出反応におけるRab3A系の役割と作用機構

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670126
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 白瀧 博通 大阪大学, 医学部, 助手 (90249962)
• 研究分担者: 佐々木 卓也 大阪大学, 医学部, 助手 (40241278)
• キーワード: 神経伝達物質 / Rabphilin3 / Rab3A / Tomsyn / SNARE / Rab3 GAP

研究概要

この数年間の私共の研究室を含めたいくつかの研究室の研究から、生体内にはRas類似低分子量G蛋白質が約60種類以上存在し、巨大なスーパーファミリーを形成していることが明らかになっている。私共の研究室では、すでにウシ大脳から多数の低分子量G蛋白質を見出している。そのなかで、私共の研究室で発見して一次構造を決定したRab3Aが、神経伝達物質の放出反応に関与していることが明らかになっている。本年度、私共は、私共が発見したRab3Aの活性制御蛋白質であるRab3 GAPに結合する蛋白質を見出し、Rab3 GAPと1対1の複合体を形成することを明かにした。一方、最近、Rab3Aが普遍的膜融合装置であるSNARE系を介して神経伝達物質の放出反応を制御している可能性が高くなっている。しかし、SNARE系の活性制御機構および作用機構についてはまだ不明な点が多い。そこで、本年度、私共は、SNARE系の新たな活性制御蛋白質を見出して一次構造を決定し、tomosynと命名したるtomosynは分子量123,636で1,116個のアミノ酸からなっており、大脳に特異的に発現していた。tomosynはSNARE系の構成因子であるシンタキシンに結合することで、シナプス小胞のプレシナプス膜へのドッキングに関与している複合体の形成に促進的に作用した。このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ完全に達成することができた。

研究成果

• [文献書誌] Jin-no,Y.: "A novel function of the C-terminal lipid moieties of Rab3A small G protein implicated in Ca^<2+>-dependent exocytosis-Inhibition of interaction with GTP and reduction of this inhibition by phospholipid." Genes to Cells. 2・4. 273-288 (1997)
• [文献書誌] Fukui,K.: "Isolation and characterization of a GTPase activating protein specific for the Rab3 subfamily of small G proteins." J.Biol.Chem.272・8. 4655-4658 (1997)
• [文献書誌] Orita,S.: "Physical and functional interactions of Doc2 and Munc13 in Ca^<2+>-dependent exocytotic machinery." J.Biol.Chem.272・26. 16081-16084 (1997)
• [文献書誌] Ohya,T.: "Involvement of Radphilin3 in endocytosis through interaction with Rabaptin5." J.Biol.Chem.273・1. 613-617 (1998)
• [文献書誌] Shimizu,K.: "Complex formation of SMAP/KAP3,a KIF3A/B ATPase Motor-associated protein,with a human chromosome-associated polypeptide." J.Biol.Chem.(in press). (1998)
• [文献書誌] Fujita,Y.: "Tomosyn : A syntaxin-1-binding protein which forms a novel complex in the neurotransmitter release process." Neuron. (in press). (1998)