生体内には約60種類以上のRas類似低分子量GTP結合蛋百質(低分子量G蛋白質)が存在し、巨大なスーパーファミリーを形成している。このうち、Rabサブファミリーは、細胞内小胞輸送の制御を介して神経伝達物質やホルモンの放出、細胞の増殖や分化、細胞運動などの重要な細胞機能に関与していることが明らかになりつつある。私共は、このRabサブファミリーに属しているRab3Aに焦点を絞り、神経伝達物質の放出におけるRab3Aの作用機構と活性制御機構について研究を行い、2年間で以下の研究成果を得た。 Rab3Aの活性制御蛋白質であるRab3 GAPを見出し、そのcDNAをクローニングして一次構造を決定した。Rab3 GAPは、catalytic subunitであるp130とnoncatalytic subunitであるp150の1:1のheterodimerであった。 Rab3 GAPは、私共の研究室で発見したRab3 GEPと共に、細胞レベルで実際にCa^<2+>依存性の分泌反応に関与していることが示唆された。一方、Rab系は、普遍的膜融合装置であるSNARE系を介して細胞内小胞輸送を制御している可能性が高くなっている。私共は、SNARE系の新規の調節蛋白質を発見し、Tomosynと命名した。脳に多く存在しているTomosynは、SNARE系の複合体形成を促進すると共に、SNARE系の構成蛋白質(シンタキシン-1、SNAP-25、シナプトタグミン)と複合体(Tomosyn complex)を形成した。さらに、Tomosynは、細胞レベルで実際にCa^<2+>依存性の分泌反応に関与していた。現在、SNARE系におけるRab3A系の作用点は明らかではないが、Rab系がSNARE系の複合体形成に関与している可能性が高いことから、Rab3A系がTomosynを介してSNARE系の複合体形成に関与している可能性がでてきた。このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ完全に達成することができた。
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