研究概要 |
1,新規Ras標的蛋白質の解析: 平成9年度に新規Ras標的候補として線虫から見い出したphospholipase C(Ce-PLC210)とGDP/GTP交換因子(Ce-Cdc25)〈いずれも新規分子種)についてそのヒトホモログ(Hu-PLC210、Hu-Cdc210、Hu-Cdc25)を単離し解析した。Hu-PLC210、Hu-Cdc25いずれにも100アミノ酸のRas-associating(RA)ドメインが存在した。Hu-PLC210のRAドメインはRasとRap1AにGTP依存性に結合し、PLCドメイン(X、Y、C2ドメイン)はホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)を加水分解した。現在Ras依存性の活性制御機構を解析している。一方、Hu-Cdc25のRAドメインはRap1AにのみGTP依存性に結合し、GDP/GTP交換因子ドメイン(Cdc25ドメイン)はRap1Aに対して強いGDP/GTP交換活性を示したが、Rasに対しても弱い活性が認められた。これに対し、Ce-Cdc25はRasとRap1Aの両方に対し同等の活性を示した。Hu-Cdc25のように標的GTP結合蛋白質にGTP依存性に結合するGDP/GTP交換因子は前例が無い。しかし、細胞外シグナルによって活性化された(GTP型)Rap1AにRAドメインが結合することでHu-Cdc25が膜にリクルートされ、そのCdc25ドメインが他のGDP型Rap1Aを活性化することでシグナルが増幅されるのではないかと考えている。 2,全標的蛋白質の遺伝子破壊、3,破壊による新規表現型の解析と、4,各標的蛋白質下流の遺伝学的解析:線虫での全Ras標的/標的候補遺伝子(Raf以外)についてトランスポゾン挿入変異体を単離し、Ce-Cdc25以外は遺伝子欠損変異体も単離してその表現型を解析している。 5,Ce-FLI-1の解析: 出芽酵母でのRas標的(アデニル酸シクラーゼ)のRas結合ドメインに酷似したドメインを持つ線虫蛋白質Ce-FLI-1について解析し、そのRas結合活性、アクチン結合・切断活性を証明した。
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