本研究では、食細胞NADPHオキシダーゼ活性化に必須のSH3ドメイン含有蛋白質(p47^<phox>とp67^<phox>:それぞれ2つのSH3ドメインをもつ)の作用機構について検討し、平成10年度は特に以下の点を明らかにした。(1)p47^<phox>のSH3ドメインはC末端領域との分子内相互作用によりmaskされている。アラキドン酸あるいはC末端領域の3つのセリン残基のリン酸化は、分子内相互作用を切り、unmaskされたSH3ドメインを介してオキシダーゼ活性化のON/OFFを担う分子間相互作用(標的分子:オキシダーゼ酵素本体であるシトクロームb_<558>)を引き起こすことを見い出した。(2)また、p47^<phox>のSH3ドメインは約10アミノ酸をはさんでtandemに配列しているが、この間隔が分子内および分子間相互作用の双方に重要であることを示した。(3)もう1つのスイッチは、p67^<phox>とGTP結合型Racの相互作用であり、この結合はp67^<phox>N末のTPRドメインを介して行われることを明らかにした。(4)Racの活性化(GTP結合型への変換)を検出する新しい方法を開発し、この方法を用いてヒト好中球刺激時のRacの活性化はP13キナーゼを介することを示した。(5)p47^<phox>のN末に新奇なドメイン(PB2ドメイン)を見い出し、このドメインがオキシダーゼ活性化の増強に働くことを明らかにした。(6)p40^<phox>(オキシダーゼ調節因子)は常にp67^<phox>と会合しているが、この結合は新奇なドメイン間(p40^<phox>のPCモチーフとp67^<phox>のPB1ドメイン)の全く新しいタイプの蛋白質間相互作用によることを見い出した。
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