研究概要 |
1.α-カテニンのアミノ末端側領域(アミノ酸番号48-163)にβ-カテニンあるいはプラコグロビンがcompetitiveに結合する。そこで、この領域を含むアミノ末端側領域(アミノ酸番号1-226)にHAtagを付けた欠失α-カテニンをMDCK,MCF7及びE-カドヘリンを発現したLcellに導入し、このタンパク質をs-tableに発現するそれぞれのcell lineを得た。細胞内でこの欠失α-カテニンはβ-カテニンあるいはプラコグロビンに結合する事が免疫沈降により明確となった。しかしながら、明らかな形態変化はいずれの細胞でも観察されなかった。 2.α-カテニンのカルボキシル末端側領域(アミノ酸番号671-906)はF-アクチンと結合し、さらにα-カテニンの中央領域(アミノ酸番号301-540)とも相互作用(分子内結合)しうる事が明らかとなった。一方、α-カテニンのアミノ酸番号301-906からなる領域のF-アクチン結合力が、カルボキシル末端側領域(アミノ酸番号671-906)の約3分の1であるという知見も得られ、これらより、α-カテニンにはF-アクチン結合能が異なるカルボキシル末端側領域がfreeであるopen formと分子内相互作用のため中央領域とカルボキシル末端側領域が結合した状態のclosed formの2種類の存在様式がある事が示唆された(平成9年度 日本生化学大会) 3.細胞骨格を制御する事が知られているシグナル分子Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate(PIP2)のα-カテニンへに結合性に関してin vitroでの結合実験を行った結果,PIP2はα-カテニンのカルボキシル末端側領域(アミノ酸番号671-906)に特異的に結合しうること、またα-カテニン-PIP2間の解離定数Kdは9.7X10^<-8>である事が明確となった(平成9年度 日本分子生物大会)。現在、細胞内でのα-カテニン-PIP2結合の有無と細胞機能への影響を検討している。
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