研究概要 |
アセチルスペルミン(AcSpm)およびN^8-アセチルスペルミジン(N^8-AcSpd)を、架橋剤GMBSを介してmercapto-succinyl BSAに結合させることにより、ジアセチルスペルミン(DiAcSpm),ジアセチルスペルミジン(DiAcSpd)類似のハプテン構造をもつ抗原を作成し、ウサギを免疫してDiAcSpm,DiAcSpdとそれぞれ優先的に反応する抗血清を得た。そして、同様のハプテン構造をもつ抗原を抗体検出用固相抗原としたELISA系を構築し、抗体の特異性の定量的解析を行いつつ、特異抗体の精製を試みた。その結果、カルボキシトヨパール樹脂にAcSpm,N^8-AcSpd,N^1-AcSpd等をアシルアミド結合させ、DiAcSpm,DiAcSpd様のリガンドをもつ各種の親和性樹脂を作成し、これらを組み合わせた親和性精製を行うことにより、DiAcSpm,DiAcSpd特異的抗体をそれぞれ有効に精製する方法を開発することができた。抗DiAcSpd抗体に関しては、N^8-AcSpdとの交叉反応0.7%まで精製を進め、この抗体を用いて検出感度約30nMのELISA拮抗法によるDiAcSpd測定系を構築することができた。実際の尿検体への適用に向けて、若干の妨害要因の同定と除去を進めている。抗DiAcSpm抗体については、N^1-AcSpdとの交叉反応を0.03%まで低下させることに成功し、検出感度10-20nMのELISA拮抗法による測定系を樹立した。この方法によって尿検体中のDiAcSpm濃度を測定し、HPLCによる分画測定によって得られた測定値と比較した結果、両者の間には相関係数r=0.99,回帰式y=1.04x+0.026μMのきわめてよい一致があることを明らかにすることができた。本年度に確立されたこの測定法を利用して尿中DiAcSpm値と悪性腫瘍の病態との間の関連の解析をさらに進める一方、さらに、特異抗体を利用した細胞内DiAcSpm測定系の開発を進め、DiAcSpmの生合成の研究への展開をはかる。
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