研究課題/領域番号 |
09670141
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研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
川喜田 正夫 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 医化学研究部門, 研究員 (00012740)
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研究分担者 |
平松 恭子 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 医化学研究部門, 研究員 (80181189)
星野 真人 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 生命情報研究部門, 研究員 (40212196)
三木 俊明 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 医化学研究部門, 研究員 (10239204)
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キーワード | ポリアミン / ジアセチルスペルミン / ジアセチルスペルミジン / ELISA / 抗ポリアミン抗体 / 腫瘍マーカー |
研究概要 |
昨年度の研究で構築したELISA拮抗法によるDiAcSpmの測定系には、固相抗原の担体の材質に、なお若干の問題が残っていた。そこで、液相中のDiAcSpmによる抗体への拮抗の効率、DiAcSpmと他の妨害ポリアミン分子種の間の識別能を保持しつつプレート表面に強く結合する担体という観点からスクリーニングを進めた結果、優れた特, 性を示すプラスチック結合性合成ペプチドを見いだし、高性能のDiAcSpm測定系を完成させることに成功した。 この測定系を利用して尿路悪性腫瘍患者の尿中DiAcSpm量の測定を進め、その動態について検討した結果、より詳細かつ広範な調査の基礎となるべきいくつかの事実が明らかになった。 1.DiAcSpmは精巣腫瘍、腎腫瘍においてはきわめて初期のものを除き大部分の症例で高値を示したが、膀胱腫瘍の症例では進行癌の患者尿でも基準値(健常者平均+2SD)以下のものがあった。診断マーカーとしての適用範囲を確定するためには、種々の疾患についてより広範な調査が必要である。 2.前立腺腫瘍の症例についてみた場合、治療前のDiAcSpmレベルにかかわりなく、治療後にDiAcSpm値が低値で安定した症例は予後良好であった。この中にはPSA(前立腺特異抗原)値が高値を維持した症例もみられた。一方、DiAcSpm値が基準値に復帰しない症例は、PSA値が治療に応答して低下し、寛解と判断された場合でも、短期間で再発する予後不良例が認められた。前立腺腫瘍でPSA陽性、DiAcSpm陰性であった症例はいずれも予後良好であった。PSAは腫瘍の存在の鋭敏な指標として、一方、DiAcSpmは患者の予後の先行指標として機能する可能性がある。DiAcSpmのこのユニークな特性については、さらに検討する価値があると考えられる。
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