研究概要 |
硫酸化糖脂質は、脳ミエリン、腎尿細管、精巣、消化管上皮に豊富に存在し、生体膜のイオン透過性調節因子や接着分子として機能していることが示唆されている。硫酸化糖脂質の合成は糖脂質硫酸転移酵素(CST)によって触媒され、その活性は上記組織で高い。本研究は、各正常組織におけるCST遺伝子の組織特異的発現分布を調べるとともに、CSTのノックアウトマウスを作製・解析することにより、硫酸化糖脂質の生理機能を解明することを目的とし、本年度は以下のことを行った。 1.ヒトCSTcDNAをプローブとして用い、マウスCSTcDNAのクローニングを行い全塩基配列を決定した。マウスCSTcDNAは1,530bpから成り、ヒトと同じ423アミノ酸をコードしていることがわかった。ヒトCSTとの相同性はアミノ酸レベルで84%であった。マウスCSTcDNAをCOS-1細胞で発現させると、ヒトCSTcDNAとほぼ同等のCST活性がみられた。 2.マウスCSTcDNAをプローブとして用い、マウスの各臓器から抽出したmRNAに対してノザンブロッティングを行った。この結果、小腸、胃>脳、腎>精巣、肺、肝臓の順にCST転写物が発現していた。ところが、CST活性は、脳、腎、精巣で高く、mRNAの発現パターンと相関していなかった。現在、この違いの原因を追究している。 3.CST遺伝子を発現している小腸、胃、脳、腎、精巣、肺、肝に関して、in situハイブリダイゼーションを行い、組織レベルでの発現を解析中である。 4.マウス129SvJゲノムライブラリーからオーバーラップする2クローンのCSTゲノムDNAをクローニングした。マウスCST遺伝子は全長20kbを越え、翻訳領域が2個のエクソンで構成されており、5'非翻訳領域が少なくとも7個のエクソンから成り、オールターナティブスプライシングにより複数種の転写物を産生することがわかった。現在、ノックアウトマウスのターゲッティングベクターを構築中である。
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