研究概要 |
(平成9年度)難治癌といわれる胆道癌、卵巣癌、神経芽腫の発生・進展(浸潤・転移)に直接関与する未知遺伝子の異常を明らかにするために、comparative genomic hybridization(CGH)法を用いて染色体上の遺伝子増幅・欠失部位を同定し、予後との相関を解析した。胆嚢癌では進行癌であるstage IIIとIVにおいてのみ12pの遣伝子増幅が認められ、予後の悪い指標となりうる可能性が示された。卵巣癌では抗癌剤シスプラチン耐性例で1p,1q,19qの増幅、2p,4qの欠失が、タキソール耐性例では7qの増幅が認められ、サザンブロット法にて7qのMDR遺伝子増幅を確認した。神経芽腫では予後不良例に特異的に1qの増幅が認められ、コスミドプロープを用いたFISH法で1q23領域に増幅部位を狭めることができた。 (平成10年度)自然消退を示す神経芽腫と進行神経芽腫の腫瘍発生における分子生物学的な違いを明らかにすることを目的として、CGH法を用いて、神経芽腫67例の遺伝子変化の解析を行った。予後不良例全例において、成人の癌で認められるような染色体上の部分的な増幅や欠失が多数認められた。一方、マススクリーニング症例の75%(とくに自然消退例では全例)では、すべての染色体でCGHプロファイルは直線的で、変化は各染色体全領域に認められるwholeパターンを示した。予後不良例における部分的な遺伝子異常は成人の癌でも通常認められ、発癌に伴う癌関連遺伝子の異常が示唆され、一方、部分的遣伝子異常を伴わない自然消退例では、癌関連遺伝子の異常とは異なる機構が腫瘍性増殖に働いている可能性が考えられた。 (平成11年度)難治癌といわれる胆道癌、神経芽腫、進行胃癌の発生・進展(浸潤・転移)に直接関与する遺伝子群の発現プロファイルを明らかにし、その結果得られた情報を新しい治療法、診断法の確立に資するため、最新のテクニックであるマイクロアレイを用いて、遺伝子のコピー数の異常をゲノムワイドに解析できるアレイCGHの確立を行った。また数千種類のcDNAを対象に癌特異的に発現する遺伝子を明らかにし、癌の発生・進展の分子機構の全体像を明らかにすることを試みた。まず、10,800種類のDNAをスライドグラスにスポットできるアレイ作製装置と検出装置を製作し、マイクロアレイシステムを構築した。次に、従来のCGHで用いるメタフェーズのかわりにcDNAやコスミドをスポットしたマイクロアレイを用い従来のCGHと同様に別々の蛍光色素で標識した腫瘍と正常DNAを等量ハイブリダイズするアレイCGHの確立を試み、感度及び定量性の検討を行った結果、1コピー対10コピー以上のDNAコピー数の変化は定量性を示した。また、既知遺伝子4,000クローンのcDNAを用いてマイクロアレイを作成し、これを用いて胃がんの遺伝子発現モニタリングを行い、胃がんに特異的に発現している遺伝子が得られた。
|