研究概要 |
1。核内イノシトールリン脂質代謝の役割 1-1。 イノシトールリン脂質による遺伝子の転写調節 我々はヒストンH1が、PtdIns(4,5)P2結合蛋白質であることを見い出した。また、ヒストンH1によるRNAへの転写抑制作用をptdIns(4,5)P2は阻害することが判明した。このことは、核においてもイノシトールリン脂質が存在し、核特有の現象である転写制御に関与していることを示している。 1-2 細胞増殖に関与するホスフォリパーゼC(PLC)δ4の核内発現 ラット再生肝ライブラリーからcDNAクローニングしたPLCδ4は、血清刺激によって核に発現が誘導される。今回種々の細胞でのPLCδ4を検討した所、ラット肝癌細胞であるAH7974細胞をはじめ、C6グリオーに局在していることが明らかになった。 1-3。 PLCδ4のプロモーター領域の解析 細胞増殖との相関が示唆されるPLCδ4の発現機構を検討した。まずマウスゲノムDNAを単離し、その一次構造を決定した。17個のエクソンから成る28kbpにおよぶゲノム解析の結果、第一に、PLCδ4には、スプライシングアイソフォームが3種類存在し、PLC活性、特にδタイプの活性を負に調節することがわかった。次にPLCδ4のプロモーター活性には、約120bpの領域が必須であり、この領域には、既存の転写因子の結合部位がないことから、未知な因子が介在することが示唆された。第三に、PLCδ4の発現がどの様に調節されているのかを検討した。PLCδ4の発現は血清中の主な増殖因子であるリゾホスファチジン酸の他、ブラジキニンそして、カルシウムイオノフォア等で強く誘導された。更に細胞内カルシウム濃度を上げるthapsigarginで活性化する反面、カルシウムキレートのBAPTA/AM,EGTA/AMで阻害されることから、PLCδ4の発現は細胞内カルシウムの上昇が引き金になる可能性が高いことが明らかになった。
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