〈目的〉結核菌などの細胞内寄生性細菌に対する感染初期の生体防御機構を担っている遺伝子として自然抵抗性関連マクロファージ蛋白Natural Resistance-Associated Macrophage Protein1(NRAMP1)が同定された。我々はNRAMP1分子の単球系細胞での発現、細胞膜への局在化を証明するとともに、N末端細胞内ドメインの微小管との結合能を示し、新たなMAP分子の一つであることを明らかにしてきた。最近、マウスNramp2の変異が遺伝性鉄欠乏性貧血を引き起こし、鉄などの二価イオン輸送体であることが示された。そこで、ヒトNRAMP2の機能解析を進めた。 〈方法〉NRAMP1 cDNAをプローブとしてNRAMP2のcDNAとゲノムを単離し、全構造を決定した。また、NRAMP2分子の細胞内ドメインと予想されるN末端部分とGST融合蛋白を作製し、蛋白分子間相互作用を解析した。さらに、この融合蛋白を抗原として抗体を得た。 〈結果と考察〉NRAMP2のNRAMP1との相同性は64%に及び、その遺伝子構造はNRAMP1遺伝子に類似しており、膜貫通ドメインとエクソンとの一致が観察された。しかし、プロモーターも含めたN末端部分の遺伝子構造に類似性はなく、機能の違いが推定された。GST-NRAMP2の融合蛋白に対する抗体を用いて各種株化細胞における発現を調べた結果、上皮系及び単球系細胞において64kDaのNRAMP2分子が検出された。しかし、NRAMP2分子の発現のない細胞株でもその転写産物は存在した。そこで、その細胞株を用いてプロモーターの活性を調べている。また、N末端細胞内ドメインの蛋白分子間結合能をNRAMP1分子と比較検討している。
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