ヒトNRAMP2遺伝子の全構造を決定する過程において、第3イントロンの中に2塩基配列の反復構造を発見した。そこで、この領域の両端を挟むようなPCRプライマーペアを作製し、ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCR解析を行った。70人の健康な成人日本人から得られたDNAを調べたところ、この領域は非常に多型性に富むことが明らかになり、遺伝子マーカーとしての重要性を示すことができた。 ゲノムプロジェクトの進行とともに分裂酵母のゲノム構造が明らかになり、その中にヒトNRAMP遺伝子の相同遺伝子を発見することができた。この遺伝子は、分裂酵母のゲノム上一個しかなく、これを相同遺伝子組換え法によって破壊することに成功した。この酵母をpdt1株と名付けて表現系を調べたことろ、二価金属イオンのキレート剤に感受性になり、さらには酸性pHにも感受性に変化していた。この株に、ヒトNRAMP1又はNRAMP2を強制発現させる系をつくり、NRAMP分子の生物学的活性測定法の確立を目指した。同時に、NRAMP1とNARMP2の間で機能ドメインと推定される領域の遺伝子工学的な交換を行い、活性に必要な構造の割り出しを試みた。その結果、NRAMP2は酵母pdt1株のキレート剤/pH感受性を完全の相補することが出来たが、一方でNRAMP1には全くその活性が検出できなかった。さらにNRAMP2のN末端細胞内ドメインをNRAMP1のものと入れ替えるだけで相補活性を失ってしまうことが明らかになった。
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