マウスでは細胞内寄生性病原体に対する自然抵抗性を担う遺伝子座位としてLsh/Ity/Bcgが知られており、ここからNramp1遺伝子が単離されている。この研究では、ヒトNRAMP2cDNAを大脳皮質mRNAに由来するライブラリーから単離した。さらに、ヒトNRAMP2遺伝子をゲノムライブラリーから単離し、その全領域のDNA塩基配列を決定した。-246〜+145塩基対の領域にプロモーター活性を証明した。ヒトNRAMP2遺伝子の全構造を決定する過程において、2塩基配列の反復構造を発見し、非常に多型性に富む遺伝子マーカーとしての重要性を示した。 分裂酵母のゲノムの中にヒトNRAMP遺伝子の相同遺伝子を発見し、この遺伝子を相同遺伝子組換え法によって破壊した。この酵母pdt1株の表現系を調べたところ、二価金属キレート剤及び酸性pHに感受性に変化していた。この株に、ヒトNRAMP1又はNRAMP2を発現させ、NRAMP分子の生物学的活性測定法の確立を目指した。同時に、NRAMP1とNARMP2の間で機能ドメインと推定される領域の遺伝子工学的な交換を行い、活性に必要な構造の割り出しを試みた。その結果、NRAMP2は酵母pdt1株のキレート剤/pH感受性を完全の相補することが出来たが、一方でNRAMP1には全くその活性が検出できなかった。さらにNRAMP2のN末端細胞内ドメインをNRAMP1のものと入れ替えるだけで相補活性を失ってしまうことが明らかにした。 ヒトNRAMP1は膜蛋白と推定され、この分子ドメインの機能を解析した。このドメインには微小管に結合活性があることを共沈殿法によって証明した。そこで、NRAMP1は新たな微小管結合蛋白ファミリーの一員であることを示唆した。また、この微小管結合活性は、NRAMP2の相同領域には存在しないことを明らかにした。
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