研究概要 |
平成9年度の研究により分画4.2(p4.2)について以下の諸点が明らかにされた。 1.赤血球膜蛋白p4.2異常症および欠損症の発見について: (1)約90症例の先天性溶血性貧血患者のスクリーニングを行い、p4.2完全欠損症を2家系発見した。さらに、p4.2部分欠損が日本人においては特徴的に遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis:HS)に多く見られることが判明した。 (2)HSにおけるp4.2部分欠損に関して: HS37家系、92例(うち患者54症例);autosomal dominant(AD)型HS、14家系、患者31症例、Non-AD型HS、23家系、患者23症例、について赤血球膜蛋白遺伝子解析、膜蛋白解析、臨床血液学的検討を行った結果以下のことが明らかとなった。p4.2単独部分欠損は特徴的にNon-AD型のHSに多く、その頻度は約70%であった。また、AD型のHSでは分画3(B3)+P4.2複合型欠損が主体であった。これらの所見は日本人のHSに特徴的であると考えられた。 2.赤血球膜蛋白p4.2異常症および欠損症の遺伝子解析結果について: (1)P4.2完全欠損症の2家系はいずれも日本人に多いP4.2遺伝子異常であるA142T(Nipppon type mutation)のホモ接合体であった。 (2)B3+P4.2複合欠損を伴うHS症例に発見されたB3遺伝子異常について: 病因遺伝子異常8種、polymorphism7種が発見された。病因遺伝子異常:frameshiftmutation:B3 Kagoshima56:1nt.del.“A", B3 Fukuyama I 112-113;2nts del.“AG"or“GA",Fukuyama II 183;1nt.ins.“A".Missense mutation;B3 Fukuoka G130R, Okinawa G740R,B3 Kumamoto R760Q,B3 Nara R808H,B3 Philadelphia T837M.Polymorphism;missense mutation;Darmstadt;D38A,Memphis:K56E,Okayama:E72D,Diego;P854L.Silent mutation;S438S.Intron7^+87;A→G,^+198〜^+200,3nts del.を認めた。このうち今回新しく発見されたものはflameshift3種とB3Okinawa,Kumamoto,Okayama,intron7の異常であった。これらの症例についてP4.2遺伝子のPCR/SSCPスクリーニングを行ったが、異常が検出されないことからP4.2部分欠損の原因はB3蛋白欠損に伴う二次的な現象と考えられた。 3.ヒト赤芽球におけるP4.2遺伝子と蛋白発現について: P4.2のmRNAはeary erythroblastにおいて発現を認めるが、その蛋白はorthochromatic erythroblast(late eryghroblast)で初めて発現が認められ、他の主要赤血球膜蛋白の中で最も発現の遅い蛋白の一つであることが判明した。さらに、今回の研究でP4.2mRNAのisoformが新たに一種発見され、全体としてisformは6種存在することが判明し、それらは血液細胞のうち赤芽球に特異的であることがsouthernblot法で判明した。
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