研究概要 |
我々は、最近、マウス単球性白血病Mm細胞において、移植性を示す亜株細胞で高く発現し移植性を示さない亜株細胞では殆ど発現していない新規遺伝子TRA1をクローニングした。また、正常細胞からTRA1関連遺伝子NOR1をクローニングした。しかし、これらの詳細な性質および作用傑作は不明である。そこで、本年度は以下に示す点について明らかにした。 1.クローニングしたTRA1 cDNA配列より204個のアミノ酸からなる分子量約23,000の蛋白質が予測された。TRA1蛋白質配列は線虫由来の少なくとも2個および酵母由来の1個の蛋白質配列と有意な類似性を示した。 2.正常マウスcDNAライブラリーからTRA1関連遺伝子NOR1をクローニングした結果、234個のアミノ酸からなる蛋白質が予測された。TRA1とNOR1蛋白質はC末から201個のアミノ酸配列は同一であるが、残りのN末側のアミノ酸配列は全く異なっていた。 3.TRA1遺伝子は正常細胞では全く発現していなかった。一方、NOR1遺伝子は殆どの正常臓器で発現が認められ、特に腎臓、肺、骨髄で高かった。しかし、Mm細胞のいずれの亜株でもNOR1遺伝子は発現していなかった。 4.移植性を示すMm亜株細胞をプチレート存在下で正常マクロファージ様細胞に分化誘導するとNOR1遺伝子の発現が誘導された。一方、TRA1遺伝子の発現は低下した。 5.移植性を示さない亜株細胞にTRA1遺伝子をトランスフェクトすると、同系マウスへの移植性が誘導された。 6.TRA1 cDNAをプローブに用いてヒト単球性白血病細胞U937のcDNAライブラリーから約2.1kbのcDNAをクローニングする事に成功した。 このように今年度の研究では、TRA1遺伝子がマウス単球性白血病Mm細胞の造腫瘍性と密接に関連している事を明らかにした。また、ヒトホモローグと思われる遺伝子をクローニングする事に成功した。
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