これまでに移植性を示すMm細胞亜株で強く発現し、移植性を示さない亜株細胞では殆ど発現していないmRNAに対応する新規のcDNAをクローニングし、MmTRA1a(Mm-1 cell derived trasplantabilityassociated gene1a)と名付けた。また、正常マウスcDNAライブラリーからMmTRA1a関連遺伝子MmTRA1bをクローニングした。両者の塩基配列からMmTRAla蛋白質は、MmTRAlbのN末側がtruncateした型であることが判明した。また、MmTRAlamRNAの発現は分化誘導に伴ない著しく減少し、逆に、MmTRA1bmRNAの発現が誘導された。さらに、移植性を示さない細胞にtruncate型のMmTRA1a遺伝子を強制的に発現させると移植性を示す細胞に変化することを示した。しかし、これらの詳細な性質および作用機作は不明である。また、ヒトホモローグについても不明である。そこで、今年度は以下に示す点について明らかにした。 1. MmTRA1のヒト相同遺伝子をクローニングするために、ヒト単球性白血病細胞U937cDNAライブラリーをスクリーニングし、約2.1kbのcDNAを単離した。 2. このcDNA配列から予想される蛋白質は正常型であるマウスMmTRA1bと78%同一であり、マウスMmTRA1bのヒトホモローグであることが判明した。 3. in situ hybridizationからヒトMmTRA1遺伝子の染色体配座が3q23である事を決定した。4. ヒトMmTRA1bmRNAの発現はマウスの場合と同様に分化誘導物質処理によって増加した。 5. MmTRA1bは、最近クローニングが報告され、アポトーシス関連物質として注目される細胞膜リン脂質scramblaseと一致する事が判明した。 このように今年度の研究では、正常型であるMmTRA1bのヒトホモローグをクローニングし、その染色体配座を決定し、その遺伝子発現についても明らかにした。さらに、このMmTRA1bはリン脂質scramblaseと一致することが明らかになった。
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