我々は、これまでに移植性を示すMm細胞亜株で強く発現し、移植性を示さない亜株細胞では殆ど発現していないmRNAに対応する新規のcDNAをクローニングし、MmTRA1a(Mm-1 cell derived trasplantability associated gene 1a)と名付けた。また、正常マウスcDNAライブラリーからMmTRA1a関連遺伝子MmTRA1bをクローニングした。MmTRA1a蛋白質は、MmTRA1bのN末側がtruncateした型であった。また、マウス単球性白血病細胞のMmTRA1a mRNA の発現は分化誘導に伴ない著しく減少し、逆に、MmTRA1b mRNA の発現が誘導された。さらに、移植性を示さない細胞にtruncate型のMmTRA1a遺伝子を強制的に発現させると移植性を示す細胞に変化した。したがって、MmTRA1遺伝子はマウス単球性白血病細胞の造腫瘍性と関連して発現する新しい癌遺伝子である。昨年度は、正常型であるMmTRA1bのヒトホモローグをクローニングし、その染色体配座を決定し、その遺伝子発現についても一部明らかにした。さらに、このMmTRA1bは最近クローニングが報告され、アポトーシス関連物質として注目される細胞膜リン脂質scramblaseと一致することを明らかにした。しかし、これらの詳細な性質および作用機作は不明である。そこで、今年度はMm細胞の移植性と関連するMmTRA1aのヒトホモローグが存在するか否かを検討した。マウスMmTRA1aとMmTRA1b cDNA配列を参考にしてプライマーを作成し、U937細胞mRNAを用いて5'RACEを行った。その結果、マウスMmTRA1a同様に、5'上流部分がMmTRA1b cDNAとは異なるcDNA存在することを見い出した。両者の共通部分とそれぞれ特異的な部分としての分岐点はマウスと一致していた。RT-PCR法を用いてU937細胞がこのMmTRA1aのヒトホモローグを発現していることを確認した。 このように今年度の研究では、Mm細胞の移植性と関連するMmTRA1aのヒトホモローグが存在することを明らかにした。
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