我々は、最近、マウス単球性白血病Mm細胞において、移植性を示す亜株細胞で高く発現し移植性を示さない亜株細胞では殆ど発現していないmRNAに対応する新規のcDNAをクローニングし、MmTRA1a(Mm-1 cell derived trasplantability associated gene 1a)と名付けた。また、正常マウスcDNAライブラリーからMmTRA1a関連遺伝子MmTRA1bをクローニングした。しかし、これらの詳細な性質、作用機作およびその構造については不明であった。そこで、平成9年度から平成11年度に行った研究から以下の示す点について明らかにした。 1.cDNAの塩基破裂からMmTRA1a蛋白質は、MmTRA1bのN末端側がtruncateした型であった。 2.MmTRA1a遺伝子はマウス正常細胞では全く発現していなかったが、MmTRA1b遺伝子は殆どの正常臓器で発現が認められ、特に腎臓、肺、骨髄で高かった。 3.MmTRA1amRNAの発現は文化誘導に伴い減少し、逆にMmTRA1b mRNAの発現が誘導された。 4.移植性を示さないMm細胞にtruncate型のMmTRA1a遺伝子を強制的に発現させると移植性を示す細胞に変化した。したがって、MmTRA1遺伝子は造腫瘍性と関連して発現する新しい癌遺伝子であることを示した。 5.ヒトcDNAライブラリーから約2.1kbの正常型であるMmTRA1bのヒトホモローグをクローニングした。in situ hybridizationからヒトMmTRA1遺伝子の染色体配座が3q23である事を決定した。 6.ヒトMmTRA1bmRNAの発現はマウスの場合と同様に文化誘導物質処理によって増加した。 7.MmTRA1bは、最近クローニングが報告され、アポトーシス関連物質として注目される細胞膜リン脂質scramblaseと一致する事が判明した。 8.Mm細胞の移植性と関連するMmTRA1aのヒトホモローグが存在することを明らかにした。
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