本年度は、CHO細胞で発現されたAPP(アミロイド前駆体タンパク質)の糖鎖について解析した。ヒドラジン分解によって糖鎖を遊離させた後、放射性ホウ素化水素ナトリウムによって還元標識した。こうして得た標識オリゴ糖の混合物をMonoQを用いた陰イオン交換カラムより分画した。約97%が陰性荷電を持ちカラムに吸着した。この吸着画分を回収後シアリダーゼで処理すると、すべてが中性オリゴ糖として回収され、陰性荷電はシアル酸であることが分かった。さらにレクチンカラム及びゲル瀘過カラムにて個々の糖鎖を分画後、特異性の高い糖鎖分解酵素による逐次消化によりその糖鎖構造を推定した。その結果、母核にフコースを持つあるいは持たない複合型2本鎖、3本鎖構造であることが判明した。一方、より少量で糖タンパク質糖鎖を解析するための分析技術の開発も行なった。同様にAPPより遊離させた糖鎖を2-aminobenzamido(2-AB)によって蛍光標識した。この蛍光標識オリゴ糖の混合物について同じように分画後、分子量を求めるためにゲル瀘過カラムではなく質量分析計によって解析を行なうと、約10フェントモルのオリゴ糖で良好なスペクトルを得ることができた。また、この方法では複数の検体を同時に測定でき、かつ各々の分析も10分以内で可能とし大幅に時間を短縮することができた。次年度はこの技術を応用し、少量しか得られないタウタンパク質のような貴重な老年性痴呆関連糖タンパク質の糖鎖についてその全貌を明らかにしたい。
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