この研究はサルコグリカン複合体(SGC)の機能を明らかにすることによって筋ジストロフィーSCARMDの病態解明を目指す基礎研究である。SGCはSCARMDだけでなく、最も主要な筋ジストロフィーであるDMDにおいても二次的に失われている。2つの病気は臨床症状、病理像ともに似ていることからSGCの機能解明はDMDの病態解明にもつながると考えられ、その意味でも重要な研究であることを改めて強調したい。 1.精製したdys-DAP複合体からある処理によって、ジストロフィンの含まないSGCとジストログリカン複合体(DGC)からなる糖タンパク質複合体が調製できることを確認した。このことはSGCとDGCの結合が本来存在していることを示す結果である。タンパク質染色で見る限りこの複合体には25DAP(最近クローン化されてサルコスパンとも呼ばれる)も存在するようであり、これが確認されれば新しい知見となる。確認に使う抗体を現在作成中である。またこの複合体中でどのような成分が相互作用するのかを明らかにするためにSGCとDGCそれぞれの成分の融合タンパク質を調製しつつあり、そろい次第実験を行う。 上記の糖タンパク質複合体調製の際、塩を高濃度にするとSGCがはずれてくることを確認した。このSGCはジストロフィンの融合タンパク質と結合する。ただこの結合の特異性確認に手間どっており、今しばらく検討する必要を感じている。この結合が確認できれば、現在並行して行っているDGCのジストロフィン結合部位に関する研究と対比させて考察したい。
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