研究概要 |
昨年我々はサルコグリカン複合体(SGC)がシントロフィン(STN)、ジストロブレビン(DBN)と結合していることを報告した。今年度我々はこの結合についてSTNやDBNがどの様にSGCと結合しているのか調べた。ジストロフィン(DTN)-ジストロフィン結合タンパク質(DAP)複合体をカルパインで部分消化したところ、DTNは断片化したが、SYNを含む殆どのDAPは変化が認められなかった。残るDBNはC末側が分解され、N末側38kDaの断片になることが発見された。消化物をWGAゲルで分画してみるとDBN断片は糖鎖がないにもかかわらず大部分のDAPと共に結合画分に検出され、反面STNは結合しなかった。従ってSTNでなく、DBNがSGCに結合していることを強く示唆する結果であった。ただし結合画分に同じく含まれるジストログリカン複合体(DGC)と結合する可能性も否定できなかった。そこで消化物のWGA結合画分を昨年報告した熱処理によってDGCを含まないSGCを調製し、そこにDBN断片が含まれるか否かを調べた。期待通り検出され、我々はDBNのN末側にSGCと結合する部位があると結論するに至った。 DBNは筋において共通のN末を持つ3種(DBN-1,-2,-3)が発現している。その何れもがSGCと結合することがわかった。DBN-1と-2は別にDTN及びSTN結合部位を持ち、DBN-3は持たないことが知られている。従ってDBN-1と-2の方はDTNとSGCを結ぶことになり、その間にSTNが割って結合していると考えられる。α-STNは一方でnNOSと結合することが知られており、従ってSGCとnNOSが物理的につながっていると考えられる。SGCはレセプターである可能性が指摘されている。従って何らかのリガンドがこれと結合し、シグナル分子であるnNOSの活性が制御される可能性を考えることができる。
|