ジストロフィン(Dys)は多数のジストロフィン結合タンパク質(DAP)とともに筋細胞膜上で大きな複合体を形成している。その中にあってサルコグリカン(SG)と呼ばれる4つのDAPからなる複合体がSG複合体である。Dysの遺伝子変異がDMDを引き起こす一方、SG遺伝子何れの変異もSG複合体全体の形成不全をもたらしDMDに良く似た一群の筋ジストロフィーを引き起こす。この様に筋の成長維持に不可欠であるSG複合体、しかしその役割は今一つ明確でない。そうした中でレセプター機能を持つ可能性が指摘されている。最近、ジストロプレビン(DB)の遺伝子KOマウスが報告され、それが筋ジストロフィー症状を示すとともにnNOSの二次的激減を示すことが明らかにされた。SG複合体のレセプター機能など、その役割について議論するには、この複合体がDys-DAP複合体の中でどの様に存在しているのかということ、またnNOSといったシグナル伝達分子とつながりがあるのかどうかを示す必要がある。 この研究で我々は精製Dys-DAP複合体を使い、これに熱を加えることによりSG複合体を含む3つの新たなDAP複合体を調製することに成功した。更にそこで見出された結合の一つをDys-DAP複合体のカルパインによる部分消化を行うなど詳細に検討した結果、SG複合体はサルコスパン(SPN)と結合していること、そしてこのSG-SPN複合体は一方でDBのN末側と、他方でジストログリカン複合体と結合していることが判明した。DBがシントロフィンと結合し、シントロフィンはnNOSと結合していることを考慮した上で、我々はSG複合体がシグナル伝達分子のnNOSと物理的に結合しているものと結論した。SG複合体がシグナル伝達分子のnNOSと物理的に結合しているものと結論した。SG複合体に対する何らかのシグナルが、これら分子結合を通してnNOSの活性を制御するならば、興味深い。
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