平成9年度はソマトスタチンレセプター2A subtype(SSR)の免疫組織化学による臨床病理学的研究をおこなった。SSRは従来オートラジオグラフィーによって、その組織学的局在が調べられてきた。今回私どもはSSRに対する特異抗体の供与を受けて、免疫組織学的に検討することが可能となった。 1、ヒトおよびラットの正常組織におけるSSRの局在 SSRは細胞質にも存在するが、細胞膜により強く反応した。下垂体前葉、膵臓のラ氏島および導管上皮、副腎皮質、消化管上皮、血管内皮細胞に強く陽性反応を示した。 2、ヒト正常乳腺組織および乳腺症、繊維腺腫、乳癌におけるSSRの局在を調べた。また、SSRの発現とエストロゲンレセプター(ER)の発現を比較検討した。さらに、乳癌におけるSSRの発現と癌の組織型、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無を検討した。その結果、SSRは正常乳腺の乳管上皮および良性病変に強く陽性所見を呈した。細胞膜により強く、胞体にはいくぶん弱く発現した。乳癌では60%に陽性で、乳管癌の51%、小葉癌の88%は陽性だった。SSRの発現はERの発現と相関した。腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無はSSR2Aの発現とは相関しなかった。 3、現在SSRのin situ hybridization法を検討中である。 4、クロモグラニンとBRCAの関係は現在検討中である。
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