自ら作成したヒト白血球ゲノムDNAコスミドライブラリーをスクリーニングして、Vesicular acetylcholine transporter(VAChT)翻訳領域全長を含むゲノムクローン(Cos25)を得た。VAChT翻訳領域をコードするゲノムにはイントロンがないので、翻訳領域の5′末端と3′末端のポリヌクレオチドをプライマーに用いCos25を鋳型としてpolymerase chain reaction(PCR)を行って、VAChT翻訳領域のみのDNAを得ることができた。このDNAを、インフレームで蛋白発現ベクターpGEX-5X-lに挿入し、スクリーニングした。ところが、得られた大腸菌クローンはすべてVAChT翻訳領域DNAが逆方向に挿入されたプラスミドのみを含んでおり、蛋白誘導可能な大腸菌はクローニングできなかった。そこで、VAChT翻訳領域のカルボキシル基末端側の一部を発現するベクターの作成を試みることに変更した。再度、Cos25を鋳型としてPCRを行い、VAChTカルボキシル基末端側の一部をコードする短いDNAを作成した。これをpGEX-5X-lに挿入して大腸菌をトランスフォームし、ようやくVAChT DNAが正方向にインフレームで組み込まれたクローンを1個(pGEX5Xl-VAChT-3)を得た。このクローンでトランスフォ一ムした大腸菌は、pGEX-5X-l由来の蛋白(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)とVAChTカルボキシル基末端側の58アミノ酸残基との融合蛋白(分子量約36kDa)を産生した。そこで、グルタチオン-S-トランスフェラーゼに対するアフィニティ力ラムを用いて、融合蛋白を発現誘導した大腸菌の細胞破砕液からVAChT蛋白を大量に抽出した。今後、ゲルろ過を行ってヒトVAChT蛋白をさらに精製し、最終的に不純物が混在しないヒトVAChT蛋白を十分量得た後に、ラットに免疫する予定である。
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