研究概要 |
腫瘍の発生・進展には血管構造が重要である.そこで甲状腺腫瘍における立体的な血管構造の特徴をレーザー顕微鏡を用いて解析し,この血管形成の背景因子として血管内皮増殖因子(VEGF)の発現とその局在について分子病理学的な立場から検討した.現在までの成果を列記すると以下のようになります. 1.基底膜蛋白の蛍光免疫染色をした組織をレーザー顕微鏡を用いて観察し,それをモニター上でreconstractionすることで,腫瘍組織内の血管構造が立体的・連続的に観察できることを見いだした. 2.甲状腺腫瘍の血管構造は腫瘍の増殖形態と密接に関連し,特に乳頭癌では乳頭状構造に毛細血管の塊(glomeruloid structure)が存在することを見いだした. 3.Northern blot法による観察では,VEGFmRNAは腫瘍組織が正常甲状腺組織に比較して高値を示した.またRT-PCR法では,3種類の亜型(VEGF_<121>,VEGF_<165>,VEGF_<189>)が正常および腫瘍組織で検出された. 4.免疫組織化学的にVEGF蛋白は腫瘍とくに癌細胞で強い陽性所見を示し,特に乳頭癌の乳頭状構造部の腫瘍細胞に強い陽性所見を認めた. 5.in situ hybridization法によるVEGFmRNAの検討でも乳頭癌の乳頭状構造部の腫瘍細胞にmRNAの強い発現を認めた. 以上の所見から甲状腺腫瘍の血管構造はその増殖形態と密接に関連し,その血管構造の形成における背景因子としてVEGFが重要な役割を果たすことが示唆されることから腫瘍細胞と間質との間の相互作用(interaction)の存在を証明した.
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